【税務Q&A】金地金は相続財産に入れなくてもバレない?

父が購入した金があるのですが、30年程前に購入したものなので、申告に入れなくてもバレないでしょうか。
もしこの金を相続人が生前贈与してもらっていたと主張した場合、その主張は認められるでしょうか?

バレるかバレないかはさておき、お父様の財産を意図的に隠して申告をすることは脱税行為に当たり、重加算税の対象にもなります。
金地金を所有しているのであれば、適切に相続税申告をして下さい。
なお、金地金を生前贈与する場合、贈与契約書を作成しておらず、贈与税申告もしていないような場合には、贈与があったと主張するのは困難です。生前贈与する場合には贈与契約書を作成し、贈与した金額が基礎控除を越えるのであれば贈与税申告をして下さい。

解説

『金を購入した時期が古い場合、相続税申告に含めなくてもバレないのではないか?』
『生前に金そのものを贈与してもらっているので、相続財産には含まれませんよね?』
というご相談を受けることが度々あります。
税理士としては、ちゃんと申告して下さい、としか言いようがないのですが、金地金に関して少し解説してみたいと思います。

昔に購入したものであれば金地金はバレない?

何十年も前に金を購入している場合、当時の銀行の入出金履歴を確認することができないため、金を購入した形跡を探す事は難しいでしょう。
また、何十年も前であれば金の価格は今よりだいぶ安いですし、数百万程度の購入であれば調査の対象となる金額ではないかもしれません。
しかし、地金には、販売元のブランド、重さ、品質、製造番号などが刻印されており、田中貴金属など取扱業者において、番号の管理は勿論、購入者などの記録も相当期間分が残っています。したがって、税務署が照会をかければ、誰が金を購入したかは分かってしまいます。

ということで、税務署が本気を出せば、金の存在はすぐにバレます。

金地金の生前贈与は主張できる?

金地金を生前にもらったとおっしゃる方もいますが、客観的な証拠がなければ贈与があったと主張することは困難です。
過去に金地金の贈与時期について争った事例があり、贈与の時期については以下のような判断が下されています。

金地金のような権利者の表示がない動産を書面によらない贈与によって取得した場合、その履行の時については、受贈者が当該動産を自己の財産として現実に支配管理し自由に処分することができる状態に至った時と解される

(平25.10.7 大裁(諸)平25-17)

この文章だけでは何を言っているのかがよく分かりませんが、この事例では、『贈与された時期は金を売った時』だという判断でした。
その理由は裁決の中で以下の通り述べられています。

①本件金地金の贈与に関し、贈与契約書等は作成されていないこと
②請求人がその主張する時期について、これを裏付ける証拠は請求人の申述のみで、これを認めるに足りる証拠はないこと
③請求人や請求人の姉妹の答述等からすると、請求人らが父Aから金地金を受け取っていたとしても、父Aの思惑によりいつでも返還の可能性があり、請求人はその主張する時期に本件金地金を自己の財産として現実に管理し自由に処分できる状態にあったとはいえないこと
④請求人は、本件金地金の贈与に関し、請求人の主張する時期に贈与税の申告をしていないことからすれば、請求人がその主張する時期に本件金地金の贈与を受けてこれを取得したものと認めることはできない。

(平25.10.7 大裁(諸)平25-17)

金地金のように、所有者が誰か分からないような場合には、贈与があったことを認めるに足りる客観的かつ充分な証拠がないと贈与があったと主張することは難しいということですね。

財産は隠さず適切な申告を!

税金を少しでも少なくしたいという気持ちは分かりますが、金があることを知っているのであれば、適切な申告をして頂けたらと思います。
また、生前贈与をする場合には、単に贈与があったと主張しても認められませんので、客観的な証拠が残るように資料をそろえて下さいね。