【税務Q&A】取壊し費用を買主が負担した場合、空き家の譲渡所得の特例は適用できる?

Last Updated on 2022年5月15日

解体費用

昨年母が亡くなり、母の自宅を相続したのですが、築50年の古い家で、もう誰も住まないので売却することにしました。
建物の取壊し費用は買主が負担する契約となっていますが、空き家の譲渡所得の特例は使えますか?

亡くなった方の自宅の取壊しを売主ではなく、買主が行った場合には空家の譲渡所得の特例を使うことはできません

解説

空き家の譲渡所得の特例が使えるのは、
①新耐震基準を満たすようにリフォームをしてから売却する場合
②自宅を取り壊してから売却する場合
のどちらかです。

古い建物が建っている場合、取壊し費用を買主が負担する前提で売却価額を低く設定しているケースが多々見受けられますが、この時、実質的には売主が解体費用相当を負担しており、更地で引き渡しているのと変わらない、という考え方があると思います。

しかし、このようなケースで空き家の譲渡所得の特例を使って申告したところ、税務署から否認され、その後国税不服審判所で争ったケースがあります。

国税不服審判所は、

本件特例が、本来課されるべき税額を政策的見地から特に減額するものとして措置法に規定された特例であることからすると、その解釈は厳格にされるべきものであり、条項で規定する文言を離れて、みだりに実質的妥当性や個別事情を考慮して、拡張解釈や類推解釈をすることは許されないと解すべきである。

(平成31年1月17日裁決_大裁(所)平30-45)

として、買主が解体費用を負担した場合には上記②のケースに該当しないため、当特例を適用できないとしています。

弊所にご相談にいらっしゃる方の中にも、取壊し費用を買主が負担していて、この特例が使えなかった、という方がいらっしゃいます。
空き家の売却を検討している場合には、事前に税理士に相談をし、要件を満たしているか確認することをお勧めします。

(参考)国税庁HP 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例